配当利回りが高く割安な総合商社「三井物産」の株価水準は魅力的?今後の見通しを含めて分析する!

配当利回りが高く割安な総合商社「三井物産」の株価水準は魅力的?今後の見通しを含めて分析する!

今回は日本の個別株の分析を気分転換に行っていきたいと思います。

筆者はプロフィールでもお伝えしている時、総合商社出身です。総合商社はどこも似たり寄ったりの業務形態なのですが、その中でもエネルギーに偏重している三井物産について取り上げていきたいと思います。

総合商社は日本を代表する企業群を構成していますが、基本的に割安に放置されています。また高配当利回りであることが魅力となっています。

本日は現在2021年時点で投資する価値があるのかという点についてお伝えしていきたいと思います。

三井物産の概要

日本最古の商社で三井家の支援のもと益田孝によって明治初期に設立された総合商社です。

第二次世界大戦の財閥解体までは商社業界Topでしたが、財閥解体後の再集結つまり大合同が遅れたため、三菱商事に後塵を拝し、最近は伊藤忠商事にも押され気味で利益ベースでは第三位の総合商社となっています。

 

以前は商社は国内と国外を繋ぐパイプ役、つまり仲介役でしかなかったのですが、それだけでは時代の波に取り残されます。

今のビジネスの大半は事業投資、つまり国内や海外の魅力的な企業に投資して、そこで上がった利益を持分法で取り込んだり、株価売却益で利益をえるという事業形態になっています。

要はやっていることはPrivate Equityと同じようなことで飯を食っています。資源分野は商社トップで資源価格高騰時の爆発力は高い商社です。

 

2020年3月期の三井物産の業績推移

参照:三井物産のIR

 

ただ、逆にいうとエネルギーに偏りすぎているとみることが出来ます。

なぜ株価は割安なのか?

それでは三井物産の指標について以下をご覧ください!

株価:1,936円 (2021年1月29日)
時価総額(株価×発行済株式数):3.3兆円
発行済株式数:1,796,614,127

予想PER:18.2
PBR:0.83
配当金:80円

 

今まではPERは10倍未満の割安水準でしたが、コロナショックで利益水準が凹んでいるbのでPERも18倍台まで上昇しています。

ただ、現在日経平均のPERが25倍であると考えると市場平均全体よりは割安であることには変わりありません。他の総合商社も同様のPER水準となっています。

 

株価= EPS × PER

 

で表され、EPSは一株当たりの利益なのですが、PERは人気を表す指数なので日経平均の7割くらいの人気しかないということですね。

これは投資家が、本当に商社の投資にそれだけの価値があるのか?

資源価格下落時のように減損するんじゃないの?

という懸念がある為、その分がDiscountされて評価されているんですよね。実際事業も多すぎて、社員ですら何やってのか分からないのが総合商社なんです。

理論株価の分析

PBRが0.81ということで、大型銘柄にしてはかなり割安な水準ではありますが、実際財務諸表の質としてはどうなのかという点を詳しく見ていきたいと思います。

理論株価は以下の式で算出されます。

理論株価=(純資産価値① + 今後の事業価値②) ÷ 発行済株式数③

ここで①と②をそれぞれ割ることで

理論株価=一株当たり純資産価値① ’+ 一株当たり今後の事業価値②’

となります。①’と②’について詳しく分析していきます。

一株当たり純資産価値の算定

まずは一株あたり純資産の方から算定していきましょう。

純資産は資産から負債で算出されますので、まずは以下の直近の資産と負債を見てみましょう。

投資会社としての特徴が色濃く表れている資産

まずは資産の部を見ていきましょう。

三井物産の資産の内容

やはり商社の資産の中で、目を引くのはこの赤枠ですよね。要は事業投資としてお金を突っ込んでいる部分になります。

この三つで6.5兆円にも上ります。では資産に対する負債はどうなっているでしょうか。

重い有利子負債を抱える負債の部

次に負債と純資産の部をみていきましょう。

三井物産の負債と純資産

負債を見て頂ければわかるのですが、長期負債の金額の大きさが目を引きますね。しめて4.2兆円です。

要は長期借入金で借入して、期間の長い事業(プロジェクト)に投資して、収益を得ているというビジネス形態となっているのです。

純資産価値

では純資産価値はどうなっているのでしょうか、まずは普通に求めていきましょう。負債から純資産を引いた金額は、上の負債欄の図に記載されている、資本合計の4.18兆円となります。

これを発行済株式数(1,688,466,849株)で割ることで一株当たり純資産価値2,476円が求められます。

 

既に純資産価値だけで現在の株価1,936円よりも安いですね!

割安銘柄だとなる前に保守的に純資産価値を見積もってみます。私がいつも行っているネットネット株基準は現金価値が時価総額を上回っている銘柄なのですが、この基準は三井物産は当たり前ですが満たしていません。

→ ベンジャミン・グレアムの投資対象『ネットネット株』を分かり易く解説

 

寧ろ、そんなことしてたら投資家から何をしているんだ三井物産は、ちゃんと資金を投資して資本価値を増やしなさいと株主総会で総スカンをくらいそうですね。

今回の保守的な純資産の価値については資産の欄でのべた事業投資の6.5兆円を3分の2の4.2兆円に見積もります。

根拠としては資源商社の三井物産としては、原油価格が現在の50USD/BBL近辺から、また減算を行った時点の30USD/BBL近辺に下がった場合を想定しています。

 

然し、これは実はかなり保守的な算定で何故なら既に物産は資源価格が暴落した時に減損会計を行っているので、更にここから減損が発生するというよりは減損の戻し入れ益が発生する可能性が高いと思います

このように算出した保守的な純資産は4.18兆円から資産が6.7兆円⇒4.4兆円にへった2.3兆円を減額して、1.88兆円となります。このようにして見積もった一株当たり保守的純資産価値は1202円となります。

つまり現在の三井物産の純資産価値は以下のようになります。

 

Min 1,113円

~

  Max 2,476円

一株あたり今後の事業価値

まず前提として、資本収益率は10%と仮定し、10年間の利益を割り引いて計算することにします。

資本収益率は投資家がどれだけの利益を株式投資によって求めるかということで、だいたい10%に設定されることが多いです。このブログでも年間10%程度の安定した利回りを求めているので特に違和感はありません。

 

また10年間としたのも、いくら三井物産といえど10年以上生き残っていない可能性もあるので、保守的にこの10年後以降については考えないものとします。

今回は二つの手法、つまり成長するモデルと成長しないモデルで考えていきたいと思います。

成長しない場合のモデル

それではまず、利益が成長しない場合のモデルですが、三井物産の今年を含めた過去3年は丁度資源が大きく下落し初の赤字会計を出した2016年3月期、底打ちした2017年3月期、資源価格が復調し始めた2018年3月期と分かれています。

2019年3月期:4,142
2020年3月期:3,915億
2021年3月期:1,800億※
平均                3,285億円

※2021年3月期は予想ですがコロナの影響で凹んでいます。

様々なケースを想定する為、以下のパターンを考えます。

毎年の純利益が1000億円が継続

この1000億円という数字は非資源分野の中で、安定した収益を出すインフラ系の利益のみが出続けた場合という保守的な算定です。

成長しないモデルの場合、1000億円を①とした場合の資本収益率10%、10年存続した場合の現在の事業価値は1000億×6.1 = 6100億円になります。

事業利益の割引現在価値の算出法

これを一株あたりに直すと6,100億円 ÷ 1,796,614,127 = 339円となります。

毎年の純利益が3年平均の3,285億円が継続

これは先程求めた平均的な純利益を元に算出されたものですが、コロナショックを算定に入れているのでこれもかなり保守的な数値となります。

然し、ここではこれも平均に組み込んで3,285億円を保守的な平均利益として考えます。この場合の一株あたりの事業価値は先程の339円×3.285倍 =1113円となります。

この二年間の巡航速度3000億円を維持した場合

何も発生しなかった場合の巡行利益は4000億円程度です。

4000億円を出し続けたと考えると、事業価値は339円×4倍=1,356円となります。

 

まとめ(成長なしVer.)

いままでの議論から三井物産が成長しない前提の1株あたりの今後の事業価値は以下のようになります。

超保守的水準 339円
保守的水準 1,113円
通常ケース 1,356円

利益が成長する場合のモデル

当然企業なので成長を前提にしない方がおかしいので、上記は元々の算定方法自体が保守的なものになります。

成長するモデルについてはROEを元に算出していきたいと思います。

その前に前提として三井物産は高配当企業で知られており、配当金が今期でいうと一株あたり70円配当をしている為、稼いだ金額の中で追加投資する分からこの分を除きます。

因みに80円の配当が10年間続いた場合の、現在価値は先程の成長しない場合の式を使って、80円 × 6.1倍 = 488円が配当価値になります。

 

ROEは自己資本を使って以下に効率よく利益を上げているのかを測る指標なので、毎年の利益については以下の式で求めることが出来ます。

自己資本× ROE

そして、この中から配当金分つまり80円×1,688,466,849株 =1350億円を除いた分を再投資して、そこにROEを掛けることにより翌年度利益を算出していきます。

図にすると以下のような感じになります。

 

初年度稼いだ利益を配当金拠出した後に再投資 初年度の再投資分を含めた自己資本からうみだされた純利益から配当金を差し引いた分を再投資

毎年の純利益から配当を除いた分の割引現在価値の10年分+先程算出した10年間の配当金価値427年の合計が今後の事業価値となります。

三井物産の過去5年平均のROEは以下の通り7%となっております。
2017年3月期 8.6%
2018年3月期 10.9%
2019年3月期 10.0%
2020年3月期 9.7%
2021年3月期 4.6%
平均    8.7%

今回は保守的に5%、平均の8%、好調の10%という3パターンで見ていきます。

保守的な5%の場合

1年目
純資産4.2兆円 × ROE5% = 2100億円
ここから配当金1350億円を除いた750億円を再投資。

750億円の現在価値は750億÷1.1(資本収益率10%で割引) = 681億円

2年目
純資産(4.2兆+再投資681億円) × ROE5% = 2134億円
ここから配当金1350億円を除いた784億円を再投資

784億円の現在価値は2年間分割り引いて1029億円÷(1.1)² = 648億円



と10年目までの現在価値を足し合わ5294億円

一株当たりの事業価値は5294億円÷1,688,466,849株=313と先程求めた配当金の価値488円の合計の801円となります。

5年平均ROEの7%で算出した場合 (配当無成長)

ではROEが8%の場合を考えてみましょう。

純資産 利益 配当金後 割引現在価値
1年後 43827 3360 2010 1827
2年後 45609 3506 2156 1782
3年後 47336 3649 2299 1727
4年後 49001 3787 2437 1664
5年後 50597 3920 2570 1596
6年後 52119 4048 2698 1523
7年後 53566 4170 2820 1447
8年後 54936 4285 2935 1369
9年後 56227 4395 3045 1291
10年後 57441 4498 3148 1214
合計 15441

一株当たりの事業価値は1兆5441億円÷1,688,466,849株=914円と先程求めた配当金の価値488円の合計の1402となります。

5年平均ROEの7%で算出した場合 (配当成長モデル)

ここで、いやいや7%成長する場合配当金も成長するんじゃないの?と考える方もいらっしゃると思うので、配当金が年率5%の勢いで成長した場合も算出していきましょう。

1年目
純資産4.2兆円 × ROE8% = 3360億円
ここから配当金1350億円を除いた2010億円を再投資。

2010億円の現在価値は2010億÷1.1(資本収益率10%で割引) = 1827億円

ここまでは同じです。では2年目はどうなるでしょう。

2年目
(純資産4.2兆円+再投資1827億) × ROE8% = 3506億円
ここから配当金1350億円×1.05=1417億円を除いた2089億円を再投資。

2089億円の現在価値は2089億÷1.1(資本収益率10%で割引) = 1726億円




これを10年後まで足し合わせた現在価値の合計は以下の通り1兆3478億円

純資産 利益 配当金後 割引現在価値
1年後 43827 3360 2010 1827
2年後 45553 3506 2089 1726
3年後 47173 3644 2156 1620
4年後 48683 3774 2211 1510
5年後 50083 3895 2254 1399
6年後 51372 4007 2284 1289
7年後 52552 4110 2301 1181
8年後 53628 4204 2305 1075
9年後 54601 4290 2296 974
10年後 55478 4368 2274 877
合計 13478

 

そして配当価値は
80/1.1+(80×1.05)/1.1² ・・・・ 80×(1.05)9乗 / (1.1)10乗
=592円とります。

その為、1株あたりの事業価値は 1兆3478億円÷1,688,466,849株 = 798円と配当価値592円=1390円となります。あんまり変わらないですね。

まとめ

いままでの分析を通じて①’の純資産価値は

Min 1,113円 ~  Max 2,476円

で表され、事業価値は

①成長しないモデルでは
超保守的水準(純利益1000億) 339円
保守的水準(純利益1900億) 1113円
通常ケース(純利益3000億) 1356円

②成長するモデルでは
保守的水準(ROE5%) 801億円
通常ケース(ROE7%配当成長なし) 1402円
通常ケース(ROE7%配当成長有り) 1390円

となりました。

ありえない程の保守的な水準つまり大減損がはっせいしまくって、純利益が10年間1000億円が続くという悲惨なケースの場合の株価は1,202円+339円=1,541円となり現在の株価1847円を下回ります。

然し、既に減損は資源価格下落時に出している為、このような事態は想定しにくく、最も妥当な水準としては純資産価値のMinとMaxの平均1800円にROE7%の事業価値を加えた3200円が理論株価として妥当な水準であると思います。

いずれにせよ、かなり保守的に見積もったとしても元本の安全性は高く大型銘柄の中ではかなり割安な銘柄でアップサイドを多分に見込める投資先といえるでしょう。

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